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都市ガスの自由化で変わったことは?
2016年の電力自由化に続いて、2017年からは都市ガスが自由化されました。
一連の自由化の流れによって、私たちはこれまで地域に1社しか選択肢のなかった電気や都市ガスの供給会社を自由に選べるようになっています。
ただし、電力と比較すると、都市ガスの参入企業はまだ少なめ。もっとも多い関東エリアでも、新たなガス会社は5社にとどまっています。選択肢の少ない中で、都市ガスを切り替えるメリットは本当にあるのか、と迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自由化で新たに参入した関東エリアの都市ガス5社の料金プランやその他の特典を比較。東京ガスと比べてどの程度割安になるのかを調べてみました。
都市ガスの切り替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
都市ガスを切り替えるとガス料金は安くなる? 都市ガスの料金を比較
現在、東京ガスの都市ガス供給エリアに参入しているガス会社は、「ニチガス」「東京電力エナジーパートナー」「レモンガス」「河原実業」「ガスパル」の合計5社です。
また、既存ガス会社の東京ガスも、ガス自由化に合わせて、従来の一般料金プランとは別に、ポイントが貯まる新しいプラン(ずっともガス)を提供しています。
それでは、各社のガス料金は、どの程度金額に差があるのでしょうか。4人家族の平均ガス使用量(40m³)で月額のガス料金を比較すると、以下のようになります。
都市ガス各社の料金を比較
月のガス料金※ | 東京ガス(一般料金)との比較 | |
---|---|---|
東京ガス | 6,160円 (1,000円につき5~15pt) |
0円 (ポイント値引分-30~90円) |
ニチガス | 5,925円 | -235円 |
東京電力 | 5,975円 | -185円 |
レモンガス | 5,889円 | -271円 |
河原実業 | 5,819円 | -341円 |
ガスパル | 6,160円 (特別割引適用時2%OFF:6,036円) |
0円 (特別割引適用時-124円) |
※月のガス使用量を40m³(3~4人家族平均)とした場合。消費税込。原料費調整制度による増減分は含まず。
自由化前の東京ガスの料金プラン(一般料金)と比較すると、ほとんどのガス会社でガス料金は安くなっていることがわかります。どの程度安くなるかは、各社の都市ガス料金と、毎月のガス使用量によって異なりますが、毎月の平均で40m³前後利用する家庭であれば、一年間で数千円ほど節約できるケースが多いでしょう。
また、料金以外の契約者特典として、電気(あるいは他のサービス)とのセット割や、ポイントサービス等を提供しているガス会社も多くあります。
ガス会社を選ぶときは、料金の比較に加えて、このような各社の付帯サービスも比較してみると良いでしょう。
東京ガスエリアの都市ガス参入企業5社の特徴は?
東京ガス ずっともガス
ガス自由化後に登場した東京ガスの新料金プラン。基本料金等は従来プラン(一般料金)と変わらないが、毎月のガス料金に応じて1,000円につき5ポイント(5円分)の「パッチョポイント」が貯まる。東京ガスの電気料金プラン「ずっとも電気」とセットで切り替えると、ポイント還元率が3倍にアップ(1,000円につき15ポイント)。さらに、電気料金も1,000円につき15ポイントが貯まるので、ガス料金・電気料金の両方で1.5%の還元を受けられる。なお、セット契約では、ポイントと別に電気料金から月額270円(税込)を割引。ガスと電気セットでの切り替えを検討するなら第一候補となるガス会社だろう。
ニチガス プレミアム5+プラン
プロパンガス大手のニチガスが提供する都市ガス料金プラン。供給エリアは関東1都6県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県)。東京ガスの一般料金と比較すると、約3.6%、最大30.0%割安となる。また、東京電力エナジーパートナーの電気とセットで契約すると電気セット割引を適用。ガス代から月額100円が割り引かれる。その他、ビットコインでガス料金を支払うと100円引きになる「ビットコイン割引」や、お釣りで投資ができるトラノコの利用者を対象とした「トラノコ割」などユニークな割引サービスが多い。
東京電力エナジーパートナー とくとくガスプラン
東京電力エナジーパートナーが提供する都市ガス料金プラン。供給エリアは東京ガスエリア内のうち東京・神奈川の1都1県。東京ガスの一般料金と比較すると、基本料金も従量料金も3%割安。さらに、ガス供給開始から1年間は5%の割引も上乗せされる。ただし、東京電力エナジーパートナーの電気料金プランとセットで契約するか、対象の電気料金プランをすでに利用している場合のみ申し込み可能。月額100円のガスセット割も受けられるので、東京電力エナジーパートナーの新電気料金プランを利用している(あるいは、これから利用する予定)であれば利用価値が高い。
レモンガス わくわくプラン
ガス自由化で新規参入したプロパンガス会社・レモンガスの都市ガス料金プラン。供給エリアは東京・神奈川・埼玉・静岡。東京ガスの一般料金と比較すると、約4.6%、最大約25.0%割安となる。また、東京電力エナジーパートナーの電気とセットで契約するとセット割を適用。金額は、ニチガスと同じく月額100円。その他、都市ガス料金がもれなく3,000円割引になる新規申込キャンペーンも実施している。万一のガス漏れなどの緊急時は東京ガスが、ガス機器や導管トラブルなどの問い合わせはレモンガスが対応。
河原実業 ちょいトク1
レモンガスと同じく、ガス自由化で新規参入したプロパンガス会社・河原実業の都市ガス料金プラン。供給エリアは東京・神奈川・埼玉・茨城。東京ガスの既存の料金プラン(一般料金)と比較すると、基本料金・従量料金の両方で単価を引き下げており、切り替えによる節約効果が大きい。また、初回の請求額から950円が割り引かれる「スタートキャンペーン」も実施。東京電力エナジーパートナーの電気とセットで契約することで、月額100円の割引も受けることができる。
ガスパル いい部屋ガス
賃貸住宅管理大手の大東建託が、自社の賃貸住宅向けに提供する都市ガス料金プラン。提供はプロパンガス会社のガスパルで、東京・埼玉・神奈川・千葉・栃木・茨城の1都5県に都市ガスを供給している。ガス料金は、東京ガスの一般料金と比較すると約2%ほど割安。家賃とガス料金をあわせての支払いも可能となっている。電気とのセットプランは取り扱っていないが、賃貸の中でも人気の高い都市ガス物件を、さらにお得な料金で利用できる点から注目を集めている。
賃貸でも都市ガスを切り替えることはできる?
賃貸住まいの方でも、都市ガスの物件であれば原則的に切り替えが可能です。都市ガスの切り替えは、電気のように電力量計をスマートメーターに交換する必要もなく、連絡1つで完了する点がメリット。
ただし、以下のようなケースでは切り替えができないため、注意しましょう。
都市ガスの切り替えができないケース
- 現在の物件がプロパンガスの場合
プロパンガスから都市ガスに切り替える場合は、専用の配管工事とガス機器の交換が必要になります。賃貸物件の場合、ガス機器や配管は家主・管理会社の所有物であり、入居者が無断で交換するのは禁物です。
- 新規参入企業がない(サービス対象外地域)の場合
周囲に新規参入のガス会社がない場合は、従来のガス会社に都市ガスの供給を依頼するしか方法はありません。しかし、ガス自由化はスタートしてまだ間もないため、今後、参入する企業は増えることが予想されます。今はガス会社の選択肢がなかったとしても、一年後、二年後が同じ状況とは限らないので、お得なガス会社の情報にアンテナを張っておくと良いでしょう。
- 戸別のガスメーターがない(一括契約など)
通常、賃貸物件であっても、ガスや電気は入居者が戸別に契約して料金を支払います。しかし、寮など一部の賃貸では、管理会社が一括で光熱費を支払っている場合も。
部屋ごとにそれぞれ戸別のガスメーターが設置されておらず、ガス会社と契約をした覚えもないという場合は、一括契約の可能性が高く、入居者の一存でガス会社を切り替えることはできません。
都市ガス自由化の気になるポイント こんなときはどうする?
ガス機器の点検や故障時の対応は、新しいガス会社に
給湯器やガスコンロなどの定期点検は、ガス会社を切り替えた時点で、切り替え先の都市ガス会社が行うことになります。また、「お湯が出ない」「火が点かない」といったガス機器のトラブルも、対応窓口はガス料金を支払っているガス会社。東京ガスや東京電力エナジーパートナーでは、ガス機器の無料出張サービスや無料修理サービスを提供しており、大手ならではの安心感があります。
ガス漏れなどの緊急トラブルは地域のガス会社が対応
一方で、「ガスくさい」といった緊急性の高いトラブルの場合は、今までその地域を管轄していた既存のガス会社(東京ガスエリアであれば東京ガス)が対応します。
ガス機器の故障以上に重要となるので、ガスコンロ付近など目につく場所に連絡先をひかえておくようにしましょう。
2018年度は新たに2社が参入を予定。都市ガスの価格競争が始まるのはこれから
関東エリアの都市ガス会社は現在5社。いずれも既存のガス料金プランからの値下げや、新しい特典を打ち出すことで、都市ガスをお得に使えるようになっています。
しかし、都市ガスの自由化はまだ始まったばかり。参入企業は今後も増えていくでしょう。すでに2018年度中には、電力会社のイーレックスや、大手石油会社のJXTGエネルギーが参入を予定しています。両社とも電気やガソリンとのセット割を提供する可能性が高く、都市ガスの価格競争は、これからが本番と言えそうです。