原発の廃炉費用は新電力にも? 廃炉費用のしくみとこれからの電力自由化

原発廃炉費用の行く末は? 新電力に廃炉費負担が課される理屈と賛否について

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原発の廃炉費用は新電力にも負担を――経産省が方針表明

原発廃炉費用の行く末は? 新電力に廃炉費負担が課される理屈と賛否について

老朽化した原発の廃炉をめぐり、廃炉費用の負担を、電力会社間でどのように分配するかが論じられています。

廃炉費用は現在、東京電力・関西電力などの大手電力会社が電気料金に上乗せするかたちで利用者から回収
しかし、経済産業省は10月24日、老朽化により大手電力会社が自主的に廃炉を決めた原発(原発事故を原因とする福島原発の廃炉は除く)について、今後は新電力にも廃炉費用の負担を求める方針であることを発表しました
一方、稼働中や稼働を目指す原発については、従来通り原発を所有する大手電力会社が、電気料金の上乗せというかたちで廃炉費用の積立(解体引当金)を行う予定です。

新電力の廃炉費負担案は、2020年の電力完全自由化(発送電分離)も関係している

経済産業省がこのような方針を打ち出した背景には、2020年4月に控えている電気料金の完全自由化(発送電分離)の影響があります。
発送電分離とは、電力会社の「発電部門」と「送電部門」を切り分け、すべての電力会社が送電設備を自由に利用できるようにする制度のこと。
現在、ほとんどの新電力は、大手電力会社の送電線を間借りし、使用料を払うことで電力を供給していますが、2020年4月以降に発送電分離が行われれば、すべての電力会社が「送電会社」と契約することになります。送電システムという土俵をそろえることで、それぞれの電力会社が、電気料金やサービスの部分で、より公平に競争できるようになることが、この制度の狙いです。

ただし、発送電分離により本格的な電力自由化が進むと、大手電力会社では利用者の離脱や電気料金の値下げが今以上に活発化し、原発廃炉の回収が難しくなることが予測されます。

廃炉費用は、大型炉1基で約560~830億円。現在、日本にある原発59基をすべて廃炉するためにかかる費用は約3兆円と見積もられており、現状では約1.2兆円の積立金が不足しています。

世論でも賛否が分かれる廃炉費負担問題

新電力に課される廃炉費負担の問題は、原発政策の今後を左右するトピックスでもあり、大手新聞各紙も賛成派と反対派に分かれて大きく取り扱っています。

賛成派

「電力安定供給の基盤を維持する費用は、広く分かち合うべき」(読売新聞)
「新電力に切り替えた消費者も、自由化前には原発で発電した安い電気を使ってきた」(産経新聞)

反対派

「消費者はこれまでも電気料金に上乗せされる形で(廃炉費用を)負担してきた。二重取りは理屈に合わない」(毎日新聞)
「『料金が安い』『環境にやさしい』といった多様な理由から契約先を選べるようにする。それが自由化の目的だ。新電力にも廃炉のつけを回せば、競争と選択の土俵をゆがめる」(朝日新聞)

新電力が廃炉費用を負担すれば、電気料金として利用者に反映される可能性が高く、私たちの家計にも直結する問題です
「電気料金を安くするために新電力に切り替えるのに、廃炉費用を乗せられて値上がりするのは嫌だ」「原発の完全廃炉が実現するのであれば、ある程度の負担は受け入れる」等、メディアのみならず消費者一人ひとりにも様々な意見があるでしょう。
新電力の負担の有無や負担割合などは、今後の続報を待つ必要があるため、政府の発表と大手電力会社&新電力の動向をそれぞれ見守っていくことが大切と言えそうです。